日本政府は、全省庁のシステムを共通の「政府クラウド」に移行し、デジタル化により不要となった事務作業を削減する方針を固めました。この移行は2023年度から始まり、効率化と公務員の働き方改革を目指しています。具体的には、手作業でのデータ再確認や入力作業を廃止し、システムの自動計算を活用します。デジタル庁は「基本方針」を改定し、業務改善を加えることでコスト削減とセキュリティ向上を図ります。また、このデジタル化の推進は、地方自治体にも呼びかけられており、主要20業務のシステム標準化を目指しています。この取り組みにより、行政サービスの向上と公務員の業務効率化が期待されます。
「文章を紙に印刷してチェックするなんて、今どきパソコンを一人一台持っている時代に本当に必要か?」と疑問に思う読者の方もいるかもしれません。
しかし、かつて複写機メーカーで中央省庁の営業担当を務めていた筆者からみて、これは決して簡単な話ではありません。
国家公務員の方々は、契約書や仕様書など提出された文書を一行一行読み、マーカーペンで印をつける作業を真剣に行っていました。このマーカーペンによって、「確認済み」の印が紙に残されます。確認済みの文書は次に先輩、上司、課長へと回され、それぞれがハンコを押していきます。国が承認する文書には、断じて間違いがあってはならないという厳格なチェック体制がとられています。
ただし、霞が関で取り扱われる契約書などの文書量は膨大です。例えば国土交通省でコピー用紙の販売に関する契約書が交わされたとき、20ほどある部局すべてを回り、押印が終わるまでには3ヶ月もの時間がかかることもありました。
パソコンで作成された文章であっても、一度紙の形になると、物理的な処理には時間と労力がかかります。紙のデータを再びデジタル情報に戻す際には入力ミスのリスクがあり、それを防ぐために再度複数人でのチェックが必要です。データとして取り扱う際には、合計が合うまで計算機を叩き続けるという、気が遠くなるような作業が発生します。
地方自治体では、道路修理や河川整備のために国から補助金が出ています。当時、自治体からの申請もすべて紙で行われており、市町村、都道府県、国土交通省地方整備局、霞が関へと申請書が回っていました。各申請は適切に処理されていますが、国全体でこれを総合して計算しようとすると、道路整備の申請がいくらで、実績がいくらか、河川整備の申請がいくらで、実績がいくらか、といった情報が紙の量が膨大すぎて計算ができないという状況に陥りました。複合機でスキャンしてデータを集計できないかと相談を受けましたが、自治体によって申請書のフォームがバラバラで、文書のサイズや数字の位置もバラバラであり、自動的に読み取ることは不可能な状況でした。
要するに、申請を最初に行う人がWebシステムに直接データを入力してくれれば問題ないのですが、紙にプリントアウトしてから承認するプロセスが加わると、作業が複雑になってしまいます。
このような業務は実は今でも、民間企業でも発生しています。
例えば、運輸業界では荷主とのやり取りで未だにFAXを使用していたり、配達時に紙の伝票でサインをもらうといったことが行われています。一人一台スマートフォンを持つ今の時代に、霞が関と同様のプロセスがまだ存在しています。
ノーコードツールを利用すれば、プログラミングの専門知識がなくてもアプリを作成することができます。そういった人材育成にぜひとも貢献したいと考えています。